
目 次
今、日本で一番売れている輸入車メーカーのメルセデス。昨年で5年連続販売台数トップという快進撃を続け、都内は勿論のこと、地方へ出てもあちらこちらで目にする。
今回はメルセデスの中でもベンツではなく、レーシング部門でもあるAMGが手掛けたモンスター4ドアクーペ『メルセデスAMG GT63S 4MATIC+』を短評レビューしたいと思う。
メルセデスの上級グレード『AMG』とは
メルセデスAMGは【究極のハイパフォーマンス】を追求するブランドとして、メルセデス・ベンツ傘下で2015年に正式にブランドとしてローンチされた。それ以前からもベンツのスポーツモデルには【AMG】の名が冠されており、車好きの中では非常に高い知名度と人気を誇っている。
メルセデスの上級グレードにはもう一つに『メルセデス・マイバッハ』と呼ばれる【究極のエクスクルーシブ】を追求するブランドがあるが、AMGは対極に位置する存在と言える。マイバッハが乗員のための車とするならば、AMGはドライバーのための車だ。
AMGの魅力
メルセデスAMGの魅力は何といってもエンジン始動ボタンを押した瞬間から感じる、上品でしなやかなメルセデスらしからぬ、唸るような獰猛さを持ったエンジン。停止している段階から只者でないことは素人でも即座に感じ取れる。
また、各所にあしらわれたシャープなエッジ、空力を意識した特徴的なディフューザーなどのエアロパーツ、そして現行モデルの上級グレードにのみ許された縦格子のパナメリカーナフロントグリルがこれまた威圧的なオーラを漂わせている。
AMGはベースグレードのベンツの車両開発初期段階であるコンセプトの時点から参画し、エンジンは勿論のことサスペンションやブレーキ、トランスミッションや車体剛性の強化などあらゆる点の変更・強化を検討している。
AMGの工場にはマイスターと呼ばれる職人がおり、C63SやGT63SなどAMGの中でもハイグレードのモデルになると、マイスターが1から10までエンジンの組み立てを行う。そして、組みあがったエンジンの中心には上記画像の用に担当したマイスターの名前とエンブレムが刻まれている。
AMGの読み方
AMGの読み方は文字通り、「エーエムジー」と読む。ちなみに本国ドイツでは「アーエムゲー」と読む様だ。
国内では時々、「アーマーゲー」と呼ばれることもあり、私の友人も稀に口にすることもあるが、正式名称では無いようだ。
AMGのモンスター4ドアクーペ『GT63S』に試乗
今回はAMGパフォーマンスツアーでGT63Sに試乗する機会を得られたので、短評インプレッションを行う。
AMG GT63S 4MATIC+とは
AMG GT63S 4MATIC+はメルセデスのパーフォーマンス部門のAMGが独自で1から開発を行ったモデルで、C63SやA45SなどベンツのCクラスやAクラスなどベースとなるグレードが存在しないオリジナルモデルとなる【GT】シリーズの一つ。
GTシリーズは2015年に開発された2ドア2シーターの『GT Coupe』があるが、今回試乗したモデルはAMG独自開発モデル初の4ドアクーペとなる。
GTの4ドアクーペには他のAMGラインナップ同様、43モデル53モデル,63モデルと3つのグレードがあり、それぞれでエンジンの気筒数や排気量ひいてはパワーが変わってくる。
今回、試乗したモデルは最高出力639PS、最大トルク91.8kgf/mを誇るAMG63シリーズ最強の4.0ℓV型8気筒直噴ツインターボエンジンを心臓に添え、車体重量2150kgという巨体ながら、0-100km/hまで3.2秒を叩き出す!
駆動型式はAMG最強のエンジンから発せられるトルクを余すことなく路面へ伝えられる様、4WD(4MATIC)が設定されている。
走り出した瞬間から分かる驚異の剛性感
最も感動したのは、その剛性の高さだ。ドイツ車のレビューを見た際によく目にするのが剛性という言葉。
ドイツ本国では諸兄の皆様方がよくご存知の通り、速度無制限区間が設けられている高速道路『アウトバーン』があるため、万が一の際にも乗員の安全を守るため、堅牢なフレームで守られている。
特に剛性の話になると上がってくるのが、ポルシェのフラッグシップモデルである911カレラだ。新型現行モデルの992型911カレラはカー雑誌で度々「剛性の塊の様だ」と表現されている。
実際、私も992型が上陸したての頃、911カレラ4Sに試乗し、愛車であるボクスターよりも遥かに高い剛性を感じた。
少々話が逸れてしまったが、AMG GT63Sもハイパフォーマンスドイツ車の例に漏れず、高い剛性が確保されているのだが、驚くべきは乗り出して車道に出ようとハンドルを切った瞬間に分かるほどの堅牢さ。全くボディが捩れる感覚がしない。
剛性の塊なんて物じゃない。自身がまるで鋼鉄の団塊に取り込まれた様なそんな気にすらなってくる堅牢さだ。
「能ある鷹は爪を隠す」公道では至って平均的な走り
剛性が高いと、街中を走るには路面の凹凸による突き上げが辛いイメージが否めない。
しかしどうして、ドライモードをコンフォートにしてあげれば嫌な入力は一切入ってこない。コツンコツンと小気味良い振動が伝わってくるくらいだ。
また、遮音性もすこぶる良い。639PSのV8ツインターボエンジンは鳴りを潜め、殆ど音も振動も伝わってこない。また、外界の他車の排気音やノイズなどもカットしてくれる。停車している限り静粛に包まれる。
ただ、唯一目立つのはロードノイズ。クーペボディでトランクルームと居住スペースが完全には別れていないため、後輪からのロードノイズは他の遮音性が高い事から、かなり目立つ印象だった。
4ドアモデルらしからぬ過激さを感じさせるスポーツモード
コンフォートモードではメルセデスらしい大人しく従順な走りを見せたが、ドライブモードを【スポーツ】に入れると様子は一変する。
マフラーのバルブが開き、今までは静かにしていたエンジンも低い唸り声を上げて室内まで侵入してくる。
アクセルペダルを踏んだ時のレスポンスも目に見えて良くなり、シフトダウンの際もブリッピングが行われる様になり、信号で停止するだけでもゾクゾクする音が背筋を抜けていく。
内外装
上品質かつ機能的なインテリア
走りはスパルタンながら内装はさすがメルセデスというところで、非常に洗練されている。
コックピットには高解像度のデジタルメーターと、中央にも高解像度ディスプレイが設置されており、まさに欧州車の最新モデルらしい様相を呈している。
試乗車はシート・ハンドル含め、全体的に白色が基調とされ、高品質なレザーが使用されており神秘的であった。
驚いたのがシートで、座り心地はメルセデス宜しくとても良いのだが車の横Gを検知して、腰や肩部などを瞬間支えてくれるのだ。また、長時間の運転でも足の疲れを軽減するため、ふくらはぎ部のシートポジションが絶妙に変わるなど、非常にドライバーフレンドリーなシートとなっている。
また、トランクルームだが、4ドアクーペとしては申し分ない容量である461ℓ(後部座席を倒すと1,324ℓ)が設けられており、家族での旅行は勿論、複数人でのゴルフも十分に可能となっている。
無骨で威圧感を覚えるマッシブボディ
外観はフェラーリやランボルギーニといったスーパーカーとは異なるが、4ドアモデルとしては十二分な迫力を醸し出している。
一番の特徴は何といっても、フロント。モンスターに相応しい強心臓が収められていると一目で分かる2つのパワードームが設けられた分厚いボンネット。強大なエンジンを冷却するために設置されたパナメリカーナグリルは途轍もない威圧感を与えてくる。
サイドはまるで日本刀のように反り返った後方に流れ落ちる美しいクーペフォルムを形成している。
リアには巨大なディフューザーと4つのスクエア型のエキゾーストテールパイプが飛び出している。テールランプは昨今の欧州車のトレンドである細目でスタイリッシュかつ分かる人には一目でAMGと分かる形状をしている。
AMGの4ドアクーペの価格は?
AMGのGT4ドアクーペには以下の3つのグレードがあり、それぞれの車両本体価格は下記の通りとなっている。
車両名 | 車両価格(税抜き) |
---|---|
GT43 | 10,888,889円 |
GT53 | 14,750,000円 |
GT63S | 21,787,037円 |
4ドアクーペの中で最も低グレードのGT43でも1,000万円超えとなっているが、GTシリーズ自体フラッグシップと呼べるため、妥当な金額ではあるだろう。
基本的にGT4ドアシリーズは全グレードにメルセデスでは必須ともいえるレーダーセフティパッケージは標準搭載されているため、オプションは無しでも何ら問題はない。オプションを付けるとしたら、インテリア・エクステリアの見た目の変化と走りに関する部分ではカーボンセラミックブレーキを搭載するか否かであろう。
最後に
競合としてはポルシェのパナメーラやBMWの8シリーズグランクーペが槍玉にあげられるだろう。GT4ドアクーペ含め、全て1,000万円オーバーの車両だ。
幸運なことに私はパナメーラを実際に1泊2日の旅で運転したり、8シリーズの試乗で助手席に座らせて頂く機会があった。
確かにどれも大衆車では得られないドライビングプレジャーを感じられる車であったが、4ドアクーペを選ぶとしたら私はAMG GT4ドアクーペを選ぶだろう。
ポルシェフリークの自分としてはパナメーラを選びたい所だが、クーペボディじゃないポルシェを選ぶのであれば私個人としてはポルシェである必要はないと感じる。
また、BMWも3シリーズや4シリーズほどのミドルボディを振り回してこそのメーカーという思いがある。
価格としては高嶺の花ではあるが、家庭を持ち経済的に余裕があるのならば是非とも購入したい一台である。
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