令和の2年目の梅雨の時期がやってきた。今年は例年より遅い梅雨入りのようだが、これが明けるといよいよ夏本番となってくる。
夏と言えばオープカーのイメージがあるが、幌を開けていたら直射日光が凄まじく、肌がジリジリと焼け、冷房は用をなさないし、流れ込んでくる風も熱風で地獄だ。しかし、空は青々と清々しい様相を呈しているのが憎たらしい。
私もそんな、夏に悩むオープンカーオーナーの1人である。
愛車との出会い
人生で初めて愛車の購入を考えたのは社会人3年目の春頃だ。会社の同僚がトヨタのハリアーを購入し、好きな時に好きな所へ行ってるのに憧れた。
そこからは早かった。なけなしの手持ちで買える車を中古車サイトで探し回り、候補に絞ったのが、BMWのZ4とポルシェのボクスターであった。
正直、その頃はポルシェの事が嫌いだった。ポルシェの車はどれも同じ見た目をしているし、丸目のヘッドライトはVWのビートルみたいで(設計者が同じだから当たり前だが)カッコ悪いとすら思っていた。
しかしどうして、ネットやカー雑誌、私の友人も皆して「ポルシェは良い車」だと言う。
ならばと言うことで、食わず嫌いなのもどうかと思い清水の舞台から飛び降りるつもりでボクスターを選択した。
だが、何よりの決め手は駆動型式はMRだったことだ。FRやFF、4WDは日常でも乗る機会はあるが、ミッドシップは独身の内に乗っておかないと、一生味わうことなく終わってしまうかもしれないと思った。
そうして私は、憧れから2か月足らずで人生初の愛車を手にすると同時にポルシェオーナーとなった。
2006年式のポルシェボクスターSで、色はオープンカーらしい派手なイエロー。内装は落ち着いたキャラメル色なのが気に入った。走行距離は10万kmに達していたが、購入時で製造から12年が経過していたし、こんなもんかと思い車両価格の安さに惹かれ購入したのを覚えている。
20代の若造にポルシェが教えてくれたこと
今までの人生で4ドアの車しか運転したことも、乗せてもらったこともない中、いきなり2シーターのオープンカーを買ってしまったわけだが、これがなかなかどうして使いやすい。
勿論、人を運ぶのは苦手だが、そもそも人を乗せることは彼女とドライブに行くときくらいしかないため困らない。
荷物もこれが意外とミッドシップのため、前後両方にトランクがあり、2人での1泊2日の旅行程度なら余裕でこなせる容量がある。
車は人と荷物を載せる、モビリティの一種だから4ドアセダンが正義という固定観念を持っていたが、自分の用途や環境に合わせていくらでも選択の余地があると教えてくれた。
だが、この車が教えてくれた一番のことは運転そのものだと思う。
3.2ℓのフラットシックスは非常にリニアで踏んだ分だけ、私が欲しいと思ったトルクを発してくれるし、エンジン音は派手さこそないものの調律されたが如くの機械音を発していてオープンにしていると耳に心地よい。
280馬力320N・mという数値は昨今の自動車と比べると凡庸な数値であるものの、1,400kgと軽量なボディに2シーターのパッケージを考えると十分以上だ。
全長4.33m・横幅1.80m・全高1295mmのロー&ワイドボディは全長が短く小回りが利き、エンジンの搭載位置も相まってノーズがスルリと切れる爽快なドライビングプレジャーを運転者に与えてくれる。この車に乗るまで、運転がここまで楽しいものだとは知らなかった。
そして、外装色が黄色なことに加え、ポルシェという目立つ車に乗っている自覚から運転も丁寧になった。
公道上で無茶な速度域で運転するなんて以ての外であるし、横断歩道を渡る人がいたらしっかり止まる、本線に合流しようとしている車がいれば譲るなど、余裕のある運転を心掛けるようにしている。
ポルシェボクスターを所有して変わったこと
よく、車を着るという表現を目にすることがある。確かに車は洋服と同じで自身を表現するための一つのアイデンティティになりえるだろう。
だが、車ほど大きな物になればその逆もあるだろう。私だからボクスターを選んだのではなく、ボクスターを所有しているから、私がある。要は車に似合う自分になろうと無意識に自分自身を最適化させているということだ。
今まで仕事にもあまり積極的ではなかったが、カーライフを充実させるためにと前のめりで頑張ったら、周りからも変わったと言われた。
ポルシェにふさわしいドライバーになろうと、まずは分かり易い目標として国内A級ライセンスを取りに行ったり、サーキットを全開で走行もした。
勿論、当初のあこがれであった好きな時に好きな所へ行くという願いも叶えられた。
この車でのドライビングプレジャーを踏まえて、もっと色々な車に乗りたいとも思うし、もっともっと車のことを知りたいという思いが日に日に強くなっていく。その思いを現実化するためにもこうして筆を執っている。
そして何より、この車を通して、こうして夢中になるモノを見つけられて本当に良かったと思う。正直、ゾッコンである。
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